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2005年12月16日 (金)

戦艦大和と官僚・政治の腐敗

 戦後六十年という節目に当り、小泉政権が圧勝し、格差拡大が懸念されている。
 続いて建築界の不正疑惑が発覚したが、この件では当事者のみならず、そこに癒着してきた政治や官僚もまた、処罰されるのが本筋だ。

 その一方で、「戦艦大和」がにわかに注目されている。
 しかしながらこのブームは、岸田秀教授曰く、「日本が明治維新以来抱えてきた分裂症」の一端といえる。
 つまり国粋主義の美化や軽薄な政権人気と、堕落を容認する無気力な気風は、この分裂症の二つの側面だ。

 太平洋戦争といえば、日本が若者に戦死を奨励し、大衆の窮乏と空襲による苦しみを、「欲しがりません勝つまでは」のスローガンで黙殺した時代だ。
 そして日本の一時的勝利になった真珠湾攻撃によって、大鑑巨砲主義が終わりを告げた時代でもあった。
 つまり大和は、建造されたその時点で、既に旧世紀の遺物と化していたのだ。

 そして当時の日本軍の戦術は、まるで負けたがっていたとしか思えないほど、硬直したものだった。
 それはすべて、大和に代表される物量作戦をはじめ、アメリカが最も得意とするものだった。
 例えばアメリカがレーダーを開発し、夜戦が不利になったのにも関わらず、執拗に夜戦を挑み続けた。
 そして何よりも、物量作戦はアメリカの十八番だ。
 それを資源の乏しい日本が、「日本人なら贅沢はできないはずだ」、「欲しがりません勝つまでは」と言い、くず鉄まで再利用しながら、特攻などの人命と資源の浪費戦術に終始し続けた。

 ベトナムやイラクといった国々のゲリラが、アメリカに善戦してきたのは、アメリカの圧倒的な物量や技術と、まともに戦わなかったからだ。
 ベトコンは、戦車やヘリを大量に差し向けるアメリカに対し、これらが動きにくいジャングルでのゲリラ戦を挑んだ。

 また、日本は外交面でも負けていた。
 日本のアジア侵略により、中国やソ連は、原爆や東京大空襲をはじめとする大量虐殺に、積極的に反対する理由を失っていた。
 そのためアメリカは、全ての日本人を的にしてよいという状況下で、その物量と技術の限りを尽くした。
 一方ベトナムでは、南ベトナムを共産主義ゲリラから守るという名目から、敵味方入り交じる戦場での戦いとなった。
 また、中国やソ連が、アメリカのベトナム進軍に露骨に不快感を示していた。
 結果、大量破壊兵器の使用は難しかった。

 話を戻せば、大和は明らかに間違った兵器だった。
 そして大和の戦死者は、総勢三千三百人以上と言われるが、その数は世界貿易センタービルのテロ犠牲者数にほぼ等しい。
 大和を美化することは、これだけの犠牲者を死に追いやったことに対する正当化になりはしないだろうか。

 そして日本は戦争に破れた。その瞬間、鬼畜米英は豊かさと自由の国アメリカと、紳士の国イギリスとなった。
 そして日本人は、それまで敵と呼んできた者たちに媚を売り、「欲しがりません勝つまでは」と言ってきたにも関わらず、経済的繁栄を目指した。

 岸田教授曰く、このとき日本の中には、戦争でアメリカに勝てなかった敵を、経済で勝つことで取ろうという暗黙の了解があった。
 そのため、政治や官僚の腐敗や、公害などの弊害が、必要悪として見て見ぬ振りされてきたといえる。

 そして現在、国民を二極分化させ、弱者を生かさないことが明白な政権が、国民の指示によって承認された。
 そして建築業界の腐敗として再び明らかになった、政官民の癒着が、長期にわたり放置されてきたことも判明した。
 こうした堕落の中で、国民の多くが経済的逼迫と社会不安に置かれながら、これらを黙認しようという無気力な気運を抱いているのは、潜在的な罪悪感があるからではないか。

 かつて「欲しがりません勝つまでは」と言ったにも関わらず、「負けたくせに欲しがった」結果、今日の経済発展を遂げたことに対して、罪悪感を抱いているのではないか。

 つまり日本人は無意識のうちに、堕落や弱者の犠牲を放置することを、その罪悪感の贖罪にすり替えようとしていないか。
 日本のビジネスマンや役人による、アジアでの買春といった破廉恥な行動や、今日の政官民癒着の容認がある一方で、大和や特攻隊が賛美される。
 こうした状況があるのは、日本が今なお分裂症であり、そして官僚や一部の肥大化した組織は、先述した罪悪感につけ込む形で、私腹を肥やしてきたのではないだろうか。

 無論、日本が戦後復興を遂げ、経済的発展を遂げたことは、その恩恵を一度ならず受けてきた私たちが否定するべきものではない。
 しかしながら、なぜあのときアジア諸国に惨禍をもたらし、「欲しがりません勝つまでは」などと言いながら、アメリカと馬鹿げた戦いをしてしまったのかについて、考える必要はある。

 そのとき日本は病んでいたのだ。

 このことを認めることで、私たちは先述した罪悪感から解放され、そして国民を生かさない政権や、腐敗した体質に、心底怒ることができるのかもしれない。
 そしてそれが日本が、戦争の歴史を反省し、新しい歴史を刻み、そして国民を真に生かす政治を樹立してゆく道になるだろう。

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コメント

 はじめまして。 こちらの広い視野での記事、興味深く拝見致しました。 
 大変詳細で分かりやすくとても参考になる記事ですね!私も歴史に興味があり、なるべく広い範囲からの事象へのアプローチを心がけていますが、なかなか容易ではありません。
 これからも多彩な観点からの考察を期待しています。どうぞ宜しくお願い致します。

投稿: ルーシー | 2006年4月 9日 (日) 02時45分

 滋夢童さん、こんにちは。コメントありがとうございました。先日歴史好きの友人と記事に関連した内容を話し合いました。ご参考までに載せたいと思います。------------以下まとめてみました~

ナチスの行った残虐行為の数々、満州においての関東軍の逸脱した行為や連合軍(アメリカ)による無差別な空襲~そして二度の原爆投下などなどは人類史における汚点となっています。

 今現在も、戦争終結のための原爆投下と正当化しているアメリカ市民もいるようですし、あれだけの悲劇、犠牲を犯しても学べない人達が存在していることを考えますと恐ろしくなります。
 
 9.11のテロに対する報復としてのアフガンへの空爆、~そしてタリバンのつながりがあるとして、大量破壊兵器を大義名分に行われたイラク戦争なども、歴史から学ばずに繰り返してしまったアメリカの正義なのでしょう。この歪んだ正義は現大統領のブッシュ・ドクトリンとも言うべき強硬手段を、報復への世論の感情が正当化させてしまった「大衆心理」の怖さを表しています。

 戦後、あの悪名高き「東京裁判」が行われました。ナチスを裁いたニュルンベルク裁判同様、一方的な「勝者の裁き」の象徴である「平和に対する罪」、「人道に対する罪」を後付けし、強引に戦犯を裁いたわけですが、では今回のイラク戦争はどうでしょうか? 

 大義名分であったはずの大量破壊兵器は何も見つからず、見切り発車した責任は「平和に対する罪」ではないのでしょうか。また、民間人を巻き込んだ空爆や誤爆は「人道に対する罪」ではないのでしょうか。それでも世界の警察を自認するアメリカは誰にも裁かれないのでしょうか。

 また、ワスプとも呼ばれる白人至上主義は異端を嫌い、いまだ根強い有色人種への差別意識は、戦場という特異な状況でその歪んだ差別心理を露出してしまうのです。

 最後に~善良なアメリカ市民が大多数だと思います。 政府官僚にも良識者もいることでしょう。 しかし、肝心の中枢部が石油利権の優先や白人至上主義を根底から改めない限り、第二、第三のイラク戦争は起こりうるのでしょう。 歴史はまたも繰り返すのでしょうか

 と、まだいろいろと話は続いたのですが、長くなりそうですので(笑)このへんに~させて頂きますね。 冷戦を肯定するわけではありませんが、現在のような一国独裁的な世界情勢では、宗教や人種、地域、石油利権、核開発などをめぐり、これからもアメリカの強引な介入による争いが予想されますね。

 今の日本政府もそうですが、対抗勢力が脆弱な場合おごりが出来、談合や癒着などの腐敗を助長する悪循環に陥りやすいのだと思います。 健全な国家や国際社会には二大勢力が絶えず切磋琢磨する状態、~これが必要だと思うのです。

投稿: ルーシー | 2006年4月14日 (金) 18時14分

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