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2006年2月 3日 (金)

日本型拝金主義、負け組、そして黙示録の皮肉1

序文

「なにかの形でハンディを背負っている人間が生きやすいようにできていなければ、文明国とは言えまい。」ー宮部みゆき『龍は眠る』

「世の中はおそかれ早かれ没落するであろうという終末論(エスカトロジー)は
腐敗堕落した国々に必ずまとわりつく、一種の病理現象である。」ー松濤弘道『お経のわかる本』

 近頃、ITビジネスのリーダーが引き起こした、株価操作と粉飾決済が物議を醸しているが、小泉政権はこの人物を、「勝ち組、負け組」時代の「理想の人物像」として利用した。
 その結果、関連株を宣伝することに協力してしまった。

 そして今日の「勝ち組、負け組」の思想は、変種の一神教である「日本型拝金主義」が生み出した「終末論」だ。

 小泉政権は支持率をつり上げるために、「勝ち組、負け組」で国民を熱狂に浮かせた。
 そのやり方は麻原彰晃が、「ハルマゲドン」で信者たちを駆り立てたのと同じだった。

 「郵政民営化」や「靖国問題」は、熱狂に拍車をかけるためのパフォーマンスに過ぎない。
 そしてかのITリーダーは、その広告塔であった。

第一章 一神教としての日本型拝金主義

 「日本型拝金主義」が一神教として成立したのは、終戦後、戦争では勝てなかったアメリカに、経済で勝とうという暗黙の了解が生まれた時だった。

 つまり「欲しがりません」で破れた復讐を、欲しがることで遂げることが、アメリカを象徴するキリスト教に対抗する唯一神として、金を浮上させた。

 俗に「新しい一神教」といえば、共産主義を思い浮かべる人も多いが、共産主義と日本型拝金主義の成立経緯は似ている。

 ロシアで共産主義が台頭したのは、当時ロシアが日露戦争での敗北や、フィンランドなど植民地の独立、第一次世界大戦といった国難に見舞われた時であった。
 このときロシアでは、「ロシア皇帝やロシア正教では、ロシアを守れない」という気運が高まった。
 それに代わる唯一神として、ロシアの団結を高める役割を担わされたのが、マルクスが生み出した思想であり、その題目が、労働者の権利と、無神論であった。

 日本は幕末の開国が、アメリカによる屈辱的なものであったため、その国難から国を守れなかった幕府を倒し、新たな守護神として天皇を擁立する熱気が高まり、明治維新に至った。
 しかし第二次世界大戦の敗北から、天皇もその役割を果たせなかった。
 戦後、経済でアメリカを見返そうという気運が高まったのは、アメリカに対抗する唯一神幻想の対象が、天皇から金に代わったからだ。

 その証拠となるのが実は、「靖国問題」である。
 靖国神社にA級戦犯を祀ることを決めたのは、皇族でも右翼でも内閣でもなく、厚生省の官僚だった。
 ちなみに右翼は、皇族がA級戦犯参拝に反対していることを受けて、靖国参拝を訴えていない。

 第二次世界大戦当時、官僚の間には、自分達の戦争継続の意思は、
天皇の意思を上回るという、誇大妄想が蔓延していた。
 そのため、「天皇が戦争反対を考えるようなら、我々がお諌めしなければ」といった文書がやりとりされていた。

 そして現在、金でアメリカに再戦を挑む官僚たちにとって、戦争をやり遂げようとしたA級戦犯の方が、唯一神失格の天皇より、自分たちの意思に近い存在だ。

 岸田秀教授は「一神教 vs. 多神教」の中で、唯一神の条件を挙げているが、金はそれらを完璧に満たすことが出来た。
 つまり:

1. 世界万有の抽象概念であること
2. 世界の仕組みを説明する力があること
3. 「裏と表」の使い分けを容認すること

 そして唯一神としての金は、高度経済発展に続き、「絶対に下がらない株と土地」という、市場経済の原理から逸脱した奇跡をもたらした。
 そのとき日本全体がいわば、金へのカルト宗教に染まっていた。
 「バブル崩壊」は政官民の癒着が、そうした奇跡崇拝の熱を冷ましただけのことであった。

 そもそも政官民の堕落や、公害や弱者の切り捨てが容認されてきたのは、「経済発展でアメリカに勝つ」ことが、日本の単一の目的として認識されていたからだ。

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